「スーパーさと」を拠点とする街づくり
赤木名集落は奄美空港から車で10分圏内にあります。
この便利な立地を活かし、「スーパーさと」を改修して有料老人ホーム、デイサービスステーション、カフェ・レストラン、物販、さらに宿泊機能をもたせ、「食の拠点」と「地域包括ケアの拠点」にすれば、雇用も産み出せ、地域の活性化につなげられる、山下はこう考えました。
既に近隣に「伝泊」が何棟かオープンしていましたが、まだ周囲に残る空き家を従業員宿舎やシェアハウス、工房付き「伝泊」などに活用することができます。
地域の障がい者施設と連携し、障がい者の就労支援や工房でのアート活動のサポートも行います。
高齢者施設勉強会でお世話になった日本社会事業大学専門職大学院教授の井上由起子さん、「いろ葉」の中迎聡子さんに加え、奄美と東京を跨ぎながら業務コンサルタントや奄美市産業創出プロデューサーの活動をするサイバー大学教授の勝眞一郎さん、在宅ケア・訪問診療を実践する「ファミリークリニックネリヤ」の徳田英弘さんと、考えを共有できるメンバーが揃い、それぞれの専門知識を持ち寄り構想を具体化してくことができました。
施設の名前は「伝泊+まーぐん広場・赤木名」に決まりました。「まーぐん」とは奄美の方言で、多種多様なモノゴトが交わりあい、融合するという意味です。
ベーテルのように、高齢者、障がい者、地域住民、観光客が分け隔てなく交流する拠点を目指し、改修工事がスタートしました。
改修工事
2017年12月、改修工事がスタートしました。
古い建物のうえ、屋根形状が複雑なため、雨漏り対策には悩まされました。また、2階ホテル部分の防音にも気を遣いました。
コストをなるべく抑えるため、スタッフ一同で自主施工した部分もありました。
2018年7月初旬に工事が完了し、いよいよ施設オープンに向けて、ハード面の準備が整いました。
「伝泊+まーぐん広場・赤木名」1階
1階部分には高齢者施設(有料老人ホームとデイサービス)、奄美の独特な文化を体験・体感できるイベントを提供するまーぐん広場、自然農法農家の野菜や果物、漁師直送の海産物を使用した料理やお茶を提供するカフェ・レストラン、伝泊ホテルのフロントと事務室が配置されています。
宿泊と高齢者施設が複合しているため、これまで旅行をあきらめていた高齢者や障がい者の方も適切なケアを受けながら宿泊することが可能です。まーぐん広場内の診察室・相談室では定期的に介護相談や健康相談を実施し、カフェ・レストランスペースでは地域の子どもたちが放課後集う学童・保育支援サービスも提供します。
「伝泊+まーぐん広場・赤木名」2階
吹き抜けより1階のまーぐん広場を見下ろすことができる2階ロビー部分は、書籍・映像・音源によって奄美の観光・文化・歴史・自然情報を深く知ることができる奄美情報ライブラリーとなっています。
シングル、ダブル、ツインの合計9室からなる伝泊ホテルの客室は、既存建物の屋根形状を活かした高い天井がユニークな、シンプルで快適な空間です。
「伝泊+まーぐん広場・赤木名」オープン
2018年7月14日、地域の方々に祝福していただきながら、「伝泊+まーぐん広場・赤木名」はオープンを迎えました。
ベーテル訪問から実に9年の年月を経て、構想が実を結んだのです。
グランドオープンのイベントでは、まーぐん広場で集落の八月踊りを皆で踊り、かつてにぎわっていた「スーパーさと」の活気が蘇りました。
けれども、施設の完成がゴールではありません。
この施設を拠点として、高齢者、障がい者、地域住民、観光客がいきいきと「まーぐん」できるよう、山下が奄美で代表をつとめる奄美イノベーション株式会社では日々さまざまな企画や運営法を試行錯誤しています。
やがて、赤木名だけでなく、奄美群島の様々な空き施設を利用して、各地に「まーぐん広場」を展開することが次の大きな目標です。