ボルトン

山下保博 x アトリエ・天工人

 

敷地の条件とクライアントの要望

敷地は交通量の多い産業道路に面した115.8㎡の大きさで、既存の鉄骨造の古い倉庫兼オフィスを壊して再建築するという計画であった。この土地のプラスの要素は、大きな道路に面しているため物の搬入がしやすく、顧客から目立つ場所ということである。マイナスの要素は、車の音がうるさいこと、トラックによる振動があること、地盤が非常に弱いことであった。
クライアントの会社は、建築資材のボルトやビスを中心に数万点にもおよぶ建材を扱う小さな商社で、新社屋は倉庫機能、ショールーム機能、事務所機能を持つ建築として面白く目立つものであって欲しいとの依頼を受けた。しかし、コスト的には大変厳しく、通常のRC造の6割ぐらいの予算(坪単価80万円前半)しか確保できないとのことであった。クライアントの求めているものを丁寧に整理し、ギリギリのコストと施工と最終仕上がりをイメージした中で、構造設計者と施工業者とのスタディーが始まった。

コラボの中から生み出す建築

軟弱地盤でコストを押さえる方法として、重量の軽い木造や鉄骨造も検討したが、最終的には差がほぼ無いことがわかり、耐火や防音に優れているコンクリートを採用した。コスト的に厳しい条件の中、このプロジェクトが実現可能だと思ったのは、関わるメンバーの構成を最初から決められたことだ。構造家の佐藤淳氏は15年来のパートナーであり、施工のホームビルダーの松岡茂樹氏とは25年来の付き合いで80棟以上のプロジェクトを一緒に作り上げており、その職人達の多くも長い付き合いの方達だった。RC造が決まった時点で、私と松岡氏で20項目以上の細項目に分け、そこに目標のコストの割り振りをして見合う材料やディテールを決定するという通常の方法とは違うやり方で進んでいった。

必然の模索と建築のダイナミズム

日本の平安・鎌倉時代の有名な仏師の運慶と快慶は、自らが形を生み出すのではなく、その木の中に眠っている形を探り当てるのだと言っていたそうだ。
今回の建築の作り方はそれに似ている。この会社の名前「ボルトン工業株式会社」に使われているボルトの持つ力強く単純にして複雑な形態を目指し、数多くのスタディー模型を作ることで形を探り当てていった。目指したのは、一筆書きで出来ているような、連続する壁と三次元的につながる抜けの空間が同時に存在するような建築である。それと同時に、建物の重量を6割カットするために、薄肉ラーメンを極限まで削り出した結果、見えて来たのがこのマスクメロンのような構造体であった。まさに、仏を掘り出したような、研ぎ澄まされた、見たこともないような形が生まれた。その構造体を邪魔しないように、開口部を覆うガラスや亜鉛メッキの鉄の階段を取り付け、コンクリート躯体の形態を邪魔しないように、最小限の線による浮いた手すりを考え出した。そして、必要な造作家具を建築の下地材で使われるラワン合板のみで作り上げた。竣工した建築をクライアントと施工業者と共に最終チェックした時に、誰ともなく出てきた言葉が印象的であった。それは、ダイナミックで清々しい建築になったことがこの会社に相応しいと。(山下 保博)

 

主な受賞

2019日本コンクリート工学会 作品賞

掲載雑誌

ウェブサイト

gooood (中国語)
ArchDaily.cn (中国語)
TREEMODE (中国語)
ArchDaily
designboom
DIVISARE
ADF webmagazine
ARCHISCENE

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竣工2018.05.16
所在地埼玉県蕨市塚越
建築用途事務所
敷地面積115.81㎡ (35.03坪)
建築面積78.75㎡ (23.82坪)
延床面積155.79㎡ (47.12坪)
構造RC造
階数地上3階
意匠設計山下保博、水上健二 、乙坂譜美 / アトリエ・天工人
構造設計佐藤淳 、シンギ・タリラ / 佐藤淳構造設計事務所
施工管理松岡茂樹、内村伸一、井沢弘二 / ホームビルダー
写真撮影傍島利浩

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