伝泊 The Beachfront MIJORA

山下保博  x(アトリエ・天工人+奄美設計集団)

1.「伝泊」の誕生と展開

山下保博は、リゾートホテル「ネストアット奄美ビーチヴィラ」の設計業務で足しげく故郷の奄美に帰るようになった頃から、地元住民や行政から増え続ける空き家の相談を数多く受けるようになりました。その相談に応えるべく、奄美の伝統的な民家をなるべく元のままの姿に修復し、水回りのみ現代的に快適な設備に改修した宿泊施設「伝泊(でんぱく)」が2016年に奄美大島北部の笠利町に2棟オープンしました。

まるで祖父母の家を訪れたような懐かしい気持ちで、島に暮らすように泊まれる「伝泊」は好評を博し、2019年までに奄美大島、加計呂麻島、徳之島の一棟貸「伝泊」は15棟にまで増えました。「伝泊」では旅行者と観光客の交流のための体験プログラムも提供しており、「伝統的・伝説的な建築と集落と文化」を次の時代に伝える宿泊施設として、アトリエ・天工人の関連会社、奄美イノベーション株式会社が運営を行っています。

2.「伝泊」のバリエーション

2018年、かつて笠利町赤木名集落の中心的存在でありながら廃業してしまったスーパーマーケットを買い取り、ホテルタイプの伝泊とレストラン・物販・地域包括ケア拠点の複合施設として改修した「伝泊+まーぐん広場・赤木名」が開業。そのまーぐん広場で開催される地域の課題検討会にて、島の小中学生がスポーツ合宿などで利用できる安価な宿泊施設とコインランドリーが求められていることが分かり、元カラオケボックスをリニューアルし、簡易宿泊所とランドリーの複合施設「伝泊ドミトリー&ランドリー」をオープンさせました。こうして、様々な旅行ニーズに対応するバリエーションが広がる中、「伝泊」シリーズの4つ目のラインナップとして山下が新たに設計したのが、この「伝泊 The Beachfront MIJORA」です。

3.「伝泊 The Beachfront MIJORA」

2010年以降、インバウンド増の後押しもあり富裕層向け宿泊施設の需要が高まっています。特に奄美はこれまで高級な宿泊施設が少なかったので、世界自然遺産登録前に受け皿を整える必要がありました。「伝泊 The Beachfront MIJORA」はその需要に応えるため、ハイエンド向け施設として計画されました。

全部で13棟のヴィラ形式の宿泊棟は、奄美北部の海岸沿いに位置する西向きの2つの敷地に配置されています。全棟に共通するのは、折り紙を思わせる力強い造形のコンクリート躯体の上に、奄美の伝統建築様式を現代的に再解釈した木屋根を載せた構成で、奄美で利用できる最大寸法のガラスの大開口が内部空間と海をつないでいます。
南寄りの「亀崎」という土地に建てられた7棟は4種類のプランからなり、同じプランの3棟も位置と前に茂るアダンの樹形によって景色が少しずつ異なり、全棟それぞれに違う表情があります。

「亀崎」より北に400mほど離れた「三鳥屋(みどりや)」に建つ6棟は、同一プランの5棟と、反転されたプランの1棟からなり、敷地の間に「みじょら広場」と呼ばれる広場を整備する予定です(2019年12月現在)。将来的には宿泊客と地域住民との交流の場となることを願っています。

 

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竣工2019
所在地鹿児島県奄美市笠利町外金久 亀崎988-1、三鳥屋861-4
建築用途宿泊施設
敷地面積894.3㎡(亀崎)、1,092.2㎡(三鳥屋)
建築面積室内面積 30.5㎡~37.0㎡ (×13棟)
延床面積デッキを含む面積 44.5㎡~75.2㎡(×13棟)
構造鉄筋コンクリート造 + 木造
階数地上1階
意匠設計山下保博、松野勉、栗田和真/アトリエ・天工人
施工管理山口建設、丸三建設工業

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