伝泊+まーぐん広場・赤木名

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故郷、奄美での設計活動と「伝泊」

高齢者施設の研究と並行して、山下はいくつもの海外のリゾート地や宿泊場所を巡り、宿泊施設の研鑽を積んできました。そうした中、山下の故郷、奄美大島の龍郷町でリゾート施設「ネストアット奄美ビーチヴィラ」を設計する機会を頂きました。

また、奄美群島の空き家問題を解決して欲しいとの依頼が行政や集落から舞い込むようになり、2016年夏、様々な集落の伝統的・伝説的な空き家を活用した宿泊施設「伝泊」をスタートしました。最初は奄美市笠利町の2棟から始まり、2年間で徳之島も含めて約15棟までに拡大していきました。

こうした活動のため、頻繁に奄美に帰り、様々な方たちと話す機会が増える中で、奄美の介護や医療の実態が少しずつ見えてきました。大学で行っている授業の実践を奄美で行いたいと思うようになりました。

 

奄美の高齢者施設のリサーチ

奄美の高齢者施設の現状についてリサーチしたところ、次のような問題点が浮かび上がってきました。

・受入可能人数が足りず、待機者がいる。介護が必要な障がい者も多い。

・奄美出身者で都会からUターンしたいと考えても、戻る場所がない。

・都会の高齢者でも過ごしたい自然環境だが、質の高い介護施設が少ない。

そこで、今後の展開のための目標をたてました。

・奄美出身者や都会の高齢者を受け入れる質の高い高齢者施設のロールモデルを作る。

・このロールモデルを皮切りに、奄美在住者のためのリーズナブルな施設及び集落を作る。

・介護する人々の給与アップを図る仕組みづくりやUターン雇用を促進する仕組みを作る。

 

 

 

「スーパーさと」との再会

山下の生まれ育った奄美市笠利町には、「スーパーさと」という、スーパーマーケットがありました。

奄美大島の北部にある赤木名(あかきな)という集落の中心で、昔の旧家の土地という由緒ある場所です。

地元食材などこだわりの商品が手に入り、単に買い物をするだけでなく、地域住民の活発な交流の拠点となる場所でした。

その「スーパーさと」が廃業し、数年経っても古い建物がそのまま残り古びていく様を見て、山下は考えました。

「集落にとって伝説的なこの建物を再利用して、高齢者施設を含む新たな拠点を作れないだろうか?」

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