消費エネルギー「0」で暮らす循環型住宅を目指す アルミプロジェクト 「A-ring」

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消費エネルギー「0」で暮らす循環型住宅を目指す

アルミプロジェクト「A-ring」

物語

アルミニウムは近代に入って量産化された比較的新しい素材です。その特徴は軽量であり加工がしやすいこと、熱伝導率が高い(熱を伝えやすい)性質を持つことです。

アルミの声を聴き、最大限にその魅力と能力を引き出し、消費エネルギー「0」の循環型住宅をつくりたいと考えた山下は、2005年から約3年間、大学や様々な企業など約20団体の協力を得て、コンセプトメイキングから新しい構造の開発、その実験及び試作品棟の組み立てを経て、3棟の現実的な建築を完成させました。それは、意外にもアルミニウムの弱点と言われた熱伝導率の高さを逆手に取った新しい建築でした。

1棟目の「Aluminum-ring House」、2棟目の「Branching Coral」に続く、3棟目の「A-ring」は、このアルミニウムプロジェクトの集大成である「循環型住宅」として完成させました。

背景・課題

2002年に、国内での新しい建築構造体に認可されたアルミニウムの業界から「汎用性の高い環境型住宅」の設計を依頼される。

アトリエ天工人の取組

脱CO2を徹底し、自然と建築が密接であり、緑化による癒しを提供するために「建築が環境装置になること」をチームで目指す。

効果・成果

アルミ構造体を使用した「放熱機」「設備空間」「太陽光発電」「オールLED」「オール電化」「屋上緑化」「緑のカーテン」を実現。

今後の展望

日本で最初の建物内全ての照明にLEDを使用した前衛的な建築は多方面から評価を受け、環境に配慮した建築家としてのスタートをきった。


背景・課題

軽量で加工がしやすい特性があるアルミニウムですが、熱伝導率が高いこと、強度が鉄などの他の素材と比べて弱いことから、建築の構造体には向かないとされてきました。

建築の主要構造材としての市場を広げたいというニーズから、アルミ業界の様々な取り組みを経て、2002年に、アルミニウムは「リユース・リデュース・リサイクル」に適した素材として、国内での建築構造体に認可されました。

当時多くの住宅建築を手がけており、前年には世界的な新人賞の受賞やエコセンターの設計で一躍時の人となっていた山下は、2005年アルミニウム協会から、“アルミニウムを構造に使用した汎用性の高い環境型住宅”の設計を依頼され、このプロジェクトがスタートしました。

山下の取組

環境に徹底的に配慮したコンセプト

このプロジェクトでは脱CO2を徹底すること、自然と建築が密接であること、緑化による癒しを提供することを達成するために「建築が環境装置になること」を目指しました。

特に脱CO2に関しては、自然エネルギーを利用した100%循環型の建築を目指し、3棟目の「A-ring」では実際に消費エネルギーが当時の通常の住宅の10分の1程度に抑えられることも証明しました。

現代のSDGsの項目「7、エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「12、つくる責任つかう責任」「13、気候変動に具体的な対策を」等の項目に先んじたプロジェクトであるといえます。

また大学でゼミで受け持ち、学生たちと共に研究・実験を行ったことや様々な団体からの協力をいただいたことは「4、質の高い教育をみんなに」「17、パートナーシップで目標を達成しよう」にも合致しています。

ALUMINIUM HOUSE PROJECT 体制図
1棟目「Aluminum-ring House」
2棟目 「Branching Coral」

効果・成果

アルミニウムハウスプロジェクトの集大成としての「A-ring」

この住宅は、日本でも厳しい環境と言われる北陸の金沢市にあります。北陸特有の湿気や雪・雨の多いこの地域で、快適な住環境を実現することが目標でした。

全ての構造を「アルミ構造体」とし、「放熱機(輻射冷暖房)」、「設備空間」に加え、「太陽光発電」「オールLED」「オール電化」「屋上緑化」アルミと緑と雨水利用による「緑のカーテン」等、理想とした計画の全てが盛り込まれています。

具体的には、大きく5つのジャンルの取組の統合による、ランニングコストを「0」に近づけるための工夫が施されています。

消費エネルギーゼロを目指す「A-ring」のコンセプト
ワークショップによる「A-ring」構造躯体を制作中の学生たち

今後の展望

このプロジェクトは日本で初めて建物内全ての照明にLEDを使用した前衛的な建築で、国土交通省の「住宅・建築物省CO2推進モデル事業」に採択されたほか、環境に配慮した点で多方面からの評価を受けました。現在SDGsを推進している山下の建築を振り返ると、この「A-ring」はチームを作って研究を重ね、その理想を本格的に現実化した最初の建築です。

山下の強みとはいち早く未来で求められるものを見定め、何かに突き動かされるかのように次々に実践していくこと。そんな彼が今、未来に向けて必要になると考えているのは集落を主体にしたまちづくりです。その革新的な思考性を生かし、単体の建築だけではない、面としてのまちづくりをSDGs的な思考で進め、未来を明るく照らしてくれることでしょう。