Castle Stay “Hirado Castle” /城泊「平戸城」

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Social Background / 社会背景

日本は観光立国を旗印に文化施設や歴史的建造物を観光に活用し、各地域の活性化と経済的な恩恵を獲得するSDGs的な大きな潮流の中にあります。

これまで保護保全を第一義としてきた「お城」もご多分に洩れず、歴史的建造物を活用した体験の提供を行う場所として、利活用が望まれています。

江戸時代から海外との門戸として栄え、それにより工芸・食・美術などの文化が華開いた由緒ある場所である長崎県平戸市でも、日本百名城の一つとして名を馳せる平戸城を観光に活用する試みを始めました。平戸城は、1962年(昭和37年)に再建された鉄筋コンクリート造の建物であったため、常設の宿泊所として生まれ変わらせることが可能であったのです。2019年に平戸市により、宿泊施設化の改修・運営事業者が公募され、Kessha株式会社、日本航空株式会社(JAL)およびアトリエ・天工人の3社JVが選定され、日本初の「城泊」の実現に向けて取り組むことになりました。山下は「平戸城」の一つの懐柔櫓(かいじゅうやぐら)の改修を行い、高級な宿泊施設に生まれ変わらせるためのプロデュースと設計・監理を行いました。

        平戸城配置図

 

 

A symbol that connects new cultures / 新たな文化をつないでゆく象徴

平戸は江戸時代において海外との門戸でした。当時の日本を代表する輸出物には、陶器・銀・茶、そして「琳派」の美術が含まれており、平戸は西洋との文化の交流地として栄えました。日本を代表する美術様式「琳派」は、当時から西洋のアーティストにも多大な影響を与え、現在も世界各国の高い感度を持つ人々が求める価値観・美意識と合致し、高付加価値を生み出しています。

山下は平戸に関するリサーチを進める中でこの歴史や背景に触れ、平戸市に世界中から観光客を受け入れていきたいという想いもこめて、「琳派」をコンセプトにすることを選択しました。山下の得意とする「地域素材の活用」も随所に散りばめ、この歴史的建造物が、過去から未来へ、新たな文化をつないでゆく象徴になることを目指しました。

 

 

        一階平面図

        二階平面図

 

Realize new value creation / 新たな価値創造を実現

平戸城の外観は、燻瓦と純白の漆喰、深い色合いの板塀から構成されていたため、お色直しをする程度にとどめました。

内部は、当時倉庫として放置されていたため、構造から見直し、プランを大きく変えました。エントランスの重層的な格子、金箔をイメージした壁や天井の仕上げ、鋳物の階段手摺、扉や家具の希少な金色の突板、さらに、九州を代表する若手アーティスト小松孝英氏の絵画が、メインの壁面をはじめ随所に施されています。

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