Den-Paku / 伝泊の誕生

建築家山下保博の出身地である奄美大島にも、昔から続く工法で建てられた空き家が数多く放置されていました。

「奄美大島の特徴のある造りの建築を残し、多くの人々に実際に利用してもらうことで、単なる建築の保存活動ではない、<生きた保存・継承> ができないだろうか」。

その想いのもと、みすてられていた伝統的・伝説的な古民家を選び、改修をほどこすことで、宿泊施設として蘇らせる仕組みをつくりました。伝統的・伝説的な建築を残すという意味を込めて、この仕組みを 【伝泊】と名付けました。

宿泊施設であると同時にその地域のコミュニティの場所としても解放し、地域の活性化につなげたいと考えています。

 

 

Amami Architecture
/ 奄美における伝統建築の7つ条件 ①~②

宿泊していただく建物は、50年以上経った奄美大島の伝統的な建築です。
私たちが考える伝統建築について、七つに分けてご紹介いたします。

①台風対策のための珊瑚石や生垣・防風林やブロックの塀
敷地の周りは、最大瞬間風速40~60mの風に耐えうるための塀が設けられています。昔の素材は珊瑚石や生垣・防風林でしたが、最近はコンクリートブロック塀も見られます。

②分散型の配置計画
敷地内には、母屋と水屋と家畜小屋、納屋、便所等がバラバラに3〜5棟配置されており、奄美の特徴的な高倉が現存する家もあり、井戸も必ず設けられています。

Amami Architecture
/ 奄美における伝統建築の7つ条件 ③~④

③平屋で入母屋の屋根形状
風が強いこと、建築的な技術があまり発達しなかったことから、平屋がほとんどです。屋根の形は、高倉から派生した入母屋造りや変形的な寄せ棟造りが多く見られます。

④高床
東南アジア地域特有の高床式が多く見られ、床高さは60〜90センチメートルです。高床の理由は二つあり、湿気対策と台風の風を通過させることで建物が倒れないようにしています。

 

Amami Architecture
/ 奄美における伝統建築の7つ条件 ⑤~⑥

⑤ヒキモン構造
奄美は、東南アジア地域からの影響で、束石の上に乗せただけの柱が土台を貫通して梁まで伸びている「ヒキモン構造」が多く見られます。これも台風対策の一環で、足元周りや建物全体の強化をするための先人たちの知恵です。

⑥独特の平面計画
母屋の間取りはメインの部屋(オモテ)を外廊下で囲い込み、その廊下が玄関の役割も果たしており、最近では廊下の先には便所が多く設置されています。玄関の近くにある台所は土間が多く、半屋外の作業場にもなっていましたが、現在は床が貼られ、台所や食事どころになっています。

 

Amami Architecture
/ 奄美における伝統建築の7つ条件 ⑦

⑦奄美の材料
奄美には、さまざまな植物がみられますが、良い木材は取れませんでした。それでも、シロアリに強い曲がった柱や梁材をうまく利用して組み立てています。屋根は茅ぶきでしたが、トタン屋根に葺きなおされており、清めのために庭に珊瑚石や海砂を敷き詰めた家もあります。

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