Social Background / 社会的背景
現在、日本の各地に適切な管理をされていない空き家が増えており、大きな社会問題となっています。住み手のいない住宅は傷みが早く、荒れた住宅は地域のイメージの低下につながります。また、空き家が犯罪の現場となったり、災害の際に倒壊して避難路を防ぐなど、防犯、防災の観点からも問題視されています。
アトリエ・天工人では、古民家について2005年から慶応大学のゼミで研究を行い、放置すれば負の遺産となるものを、地域資源として利活用する方法を考えてきました。
Tekuto Renovation Project (Overseas)
/ アトリエ・天工人の取り組み(海外)
エチオピア・ミレニアム・パビリオン(2007年)
在エチオピアの日本大使館より、エチオピア歴2000年を記念して、日本との文化交流のためのパビリオンをつくる依頼がありました。そこで私たちは、両国の伝統的な住居に着目しました。
エチオピアの伝統的な円形住居は、シンプルな石積みの壁と、ジョイントを結び合わせた木造の屋根組みで構成されます。一方で日本の伝統的な民家は、金物を使わない精緻な木造構築物です。
日本の古民家をエチオピアへ移築し、エチオピアの伝統住宅と融合することにより、「価値の再編成」を通じてふたつの文化が出会いました。
Tekuto Renovation Project (Japan)
/ アトリエ・天工人の取り組み(国内)
YA-CHI-YO(2009年)
日本国内の事例としては、古民家に着目しました。
島根県で廃棄されかけていた大正時代の蔵2棟分の軸組みを解体して、神奈川県の葉山に運び、敷地で再構築しました。建具や床には、蔵で使用していた板材や80年前の上海のレンガを使用しています。様々な新旧の素材が地域や国を超えてこの空間で再構築されています。
古民家を移築することにより、日本古来の住まいの材質感や佇まいを、現代の住宅に取り込み、今までにない新しい時間軸や空間を実現しました。