ネストアット奄美ビーチヴィラ/Miru AMAMI

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メインコンセプト:ハザマ()をデザインする

山下は、奄美の歴史、自然や植物、既存宿泊施設の研究を行う中で、奄美をデザインすることは様々な「ハザマをデザインする」ことではないかと思い至りました。

そのハザマのデザインは5つの観点に分けることができます。

①海に囲まれた島であるため広大な空と海のハザマの中での自己解放の獲得

②自然と人間のハザマの中で壊されてきた植生を可能なかぎり昔の姿に戻す保全活動

③伝統的な建築と新しい建築のハザマの中で懐かしさと新しさの創出

④伝統的な産業の手法と新しい素材のハザマの中での奄美らしい建材の開発

⑤世界自然遺産登録目前のハザマの中でのバラエティー豊かな宿泊施設の整備と食の充実

 

コンセプト①

海に囲まれた島であるため、広大な空と海のハザマの中での自己解放の獲得

奄美らしいゆったりとした時間と空間を感じられるよう、管理室とホテルレセプションを含むレストラン棟の他は、プール付ヴィラ「プール棟」(3棟)と2室が連携する「2キー棟」(10棟)という2タイプのヴィラ形式の客室を分散配置する構成にしました。

屋根形状も大小の屋根のハザマから光が落ちるよう工夫するなど、ハザマや抜けのある建物配置と空間づくりを行いました。敷地内のどこにいても、広い空と青い海の開放感に包まれることができます。

 

コンセプト

自然と人間のハザマの中で壊されてきた植生を可能なかぎり昔の姿に戻す保全活動

都会と比べると奄美には自然が多く残っていますが、実は人間の営みの中で、古来の風景とは変わってしまっている場所がたくさんあります。奄美の昔ながらの風景を取り戻し、海岸近くの固有の植生を復元することをめざし、地元の植生に関する文献を読み、島の有識者にも話をうかがいました。

敷地の各ゾーンに「森の集落」「海辺の集落」などのテーマを設定し、それぞれに適した植栽とランドスケープを計画していきました。

 

コンセプト

伝統的な建築と新しい建築のハザマの中で懐かしさと新しさの創出

個々のヴィラを設計するにあたり、「奄美らしい形状」についてじっくり検討しました。奄美の伝統的な入母屋屋根の住宅や高倉など、台風の多い風土に適した形態や構造を調査するだけでなく、奄美に生育する巻貝などの形態も研究しました。

多数のスタディ模型を作成する中で、伝統的要素と巻貝にインスパイアされた新しい要素が融合する形態が導き出されました。

 

コンセプト

伝統的な産業の手法と新しい素材のハザマの中での奄美らしい建材の開発

奄美にはリュウキュウマツやイタジイ(別名:スダジイ)などの木材がありますが、主にチップ用材や公共土木用資材としての利用が主で、建築用材としてはほとんど使われてきませんでした。また、近年では松くい虫によるリュウキュウマツの被害が広がり、多くの松が立ち枯れています。

奄美産木材を建築に活用するため、大島紬の染色法でイタジイを染める研究しました。イタジイにはタンニンが含まれているため、鉄分を多く含む奄美の泥に漬けることで深いグレーに色が変わります。建築に使用できる品質を確保するため、地元工房の協力を仰ぎ、木の厚さ、染め時間、乾燥方法を様々なパターンで行い、データを蓄積しました。レストラン棟と2キー棟の屋根、プール棟の屋根と外壁は、この泥染めのイタジイで仕上げられています。

 

コンセプト

世界自然遺産登録目前のハザマの中でのバラエティー豊かな宿泊施設の整備と食の充実

2013年1月、政府は「奄美・琉球」をユネスコの世界遺産暫定一覧表に記載することを決定しました。その4年後の2017年、「奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島」がユネスコ世界自然遺産の登録候補地として正式に推薦されることが決まりました。2018年夏には登録の可否が正式に発表される予定です。世界自然遺産に登録されれば、国内はもちろん海外からの旅行客も急増することが予想されます。島内の既存の宿泊施設よりもハイグレードなリゾートを提供することで旅行者の選択肢をふやすこと、また、旅の大切な醍醐味でもある地方色豊かな美味しい食事を味わうのにふさわしい空間をつくることを念頭に置きながら設計は進められました。

世界自然遺産登録により、奄美には大きな変化が訪れると思われますが、良い変化は受け入れつつ、昔ながらの奄美の良さは大切に守りつづけたい。そのような希望が、このリゾートにはこめられています。

 

 

 

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