SHIRASU / シラスプロジェクト

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What is “Shirasu”?/ シラスとは

「シラス」とは、南九州地域の火山による火砕流堆積物の総称です。特に鹿児島県では総面積の約半分(4,600k㎡)の地域に分布しており、平均60mの厚さで堆積しています。埋蔵量は750億m3といわれており、東京ドーム6万杯分に相当します。

水はけが良すぎることと栄養分が乏しいため稲作などの農業には適さず、大雨の時には浸食と土砂崩れを起こしやすいため、使い道のない迷惑な材料と見なされてきました。

 

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History of Studies about “Shirasu”/シラス利活用研究の歴史

利用価値の少ない「シラス」でしたが、先人たちは手をこまねいてきたわけではありません。これまでも、未利用資源であるシラスの利活用に関する様々な研究が行われてきました。

一部、土木分野における舗装路盤材料、埋立材への利用、多孔質な点に着目した左官素材の開発などが実現されてきましたが、建築物への利用は建築基準法の規定が壁となり、実現していませんでした。

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Project member/ プロジェクトメンバー

「シラス」という地域特有の未利用資源の利活用、コンクリート産業に対する現代的な課題。これらを解決するために、2012年、私たちはプロジェクトチームを立ち上げました。

プロジェクトチームが目標としたのは、地域に眠っている未利用資源「シラス」の利活用、および完全リサイクル型のコンクリート「環境型シラスコンクリート」の開発、そして建築物への利用です。

メンバーは、山下保博(九州大学客員教授、アトリエ・天工人代表、建築家)、野口貴文(東京大学教授、完全リサイクルコンクリート研究者)、佐藤淳(東京大学准教授、構造設計者)、東和朗(株式会社プリンシプル代表取締役、シラス生産者)、伊藤司(東京SOC常務取締役、シラスコンクリート製造業者)。製造・施工・流通までを見通した多面的なチームです。

鹿児島大学の研究者、県の研究機関、シラス製造業者との連携を図り、構造設計者やコンクリートプラントの協力を得てプロジェクトが始動しました。

 

 

p7Obstacles to the Use in Architecture
/ 建築利用への4つの課題:素材開発・管理

プロジェクトチームの調査により、シラスを建築物に利用するための課題が明らかになりました。それらの課題に対して、プロジェクトチームのメンバーそれぞれがそれぞれの専門性を遺憾なく発揮し、解決方法を見出していきました。

課題-1 建築基準法に適合させること

シラスの建築への利用で、もっともハードルが高い課題が建築基準法への適合でした。
火山から噴出してきたシラスは天然素材そのもので、JIS規格に規程される砂よりも粒が細かく、軽量で含水率が多いため、そのまま利用することができないのです。
それに対して、シラスをコンクリートに混ぜた際の強度について、様々な実験を行いました。その結果、まずは一棟単位の個別のケースであれば、大臣認定を経ることで建築物に利用できることになりました。

課題-2 シラスの品質管理

天然素材のシラスですが、建築用コンクリートとして利用するためには「工業製品」としてに品質を確保する必要があります。
そのため、製造から輸送、保管に至るまで、シラスの製造業者である「株式会社プリンシプル」を中心に、品質管理マニュアルを作成し、検証を行いました。

 

 

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Obstacles to the Use in Architecture
/ 建築利用への4つの課題:実用化

課題-3 製造するプラント

私たちが目標としたのは机上での研究ではなく、建築物として実際に用いること、つまり実用化です。
素材として開発ができたとしても、それを製造してくれる工場がないと現実の建築に使うことができません。工場では一般的なコンクリートを製造するためのラインが常時稼動しており、そのなかに「シラス」という、ある意味で「異物」となる素材を持ち込むことは製造プラントの品質管理として非常に難しい側面があります。
シラスという眠れる資源の利活用、そして「環境型シラスコンクリート」を作るという、大きな社会的な夢に共感してくれら「東京エスオーシー株式会社」が、自社の貯蔵施設を提供してくれることになりました。

課題-4 現場での施工

建築は「現場」でつくられます。
これまでに実績のあったダムや橋(土木構造物)に比べると、建築のスケールは小さく、さらなる精度を必要とします。実験室での実験でよいデータが得られ、工場での品質管理を徹底したとしても、不確定性の高い工事現場で同じ結果が得られるとは限らないのです。そこで、問題となりそうな要素を事前に抽出し、解決策を立てるために、原寸大の施工実験を行いました。
実際に施工された小さな構造体は、私たちの予想を上回る精度で打設することができ、非常に美しい仕上がりを示してくれました。

 

P9“Acquisition of Minister Approval for the individual project / 個別大臣認定取得

素材から製造プロセス、建築現場まで多面的な課題をクリアするための道のりは短くありませんでした。
シラスの物性としての測定、配合の検討、季節による条件の違いの検証、実験室での試験練り、原寸大構造体の施工検証、実際に使うプラントでの実機練り、さらには耐久性の確認のための中性化試験など、様々な側面からの検証を行うことが必要とされました。
2012年のプロジェクトチーム立ち上げから二年近くの開発実験を経て、ついに2014年3月、一棟の建築物を建てるための「個別大臣認定」を取得することができました。

 

 

Characteristics of Environmentally Conscious “SHIRASU” Concrete
/ 環境型シラスコンクリートの特徴

私たちプロジェクトチームが開発した「環境型シラスコンクリート」には、下記のような多面的な特徴があります。

1. 資源の保護に優れている
・枯渇資源である砂の6割以上をシラスに代用できる。
・セメント素材に産業廃棄物を利用する。

2. 環境負荷が少ない
・砂や砂利を石灰砂・石灰砂利に代替することで解体時にセメント原料として完全にリサイクルできる。
・セメントの焼成エネルギーおよびCO2排出を減らすことができる。

3. 強度・耐久面
・長期強度、耐硫酸性、塩害に優れている。
・粘性が低く施工性が高いため、施工不良が少ない。

4. キメが細かく、調湿性能がある
・キメ細かい仕上がりとなる。
・多孔質のため調湿・消臭効果がある。

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