当計画の敷地であるノドゥル島は、ソウルの水源である漢江に位置し、自然公園に隣接する環境にある。
私たちは島に潜在する新しい可能性に着目し、文化施設の建設というプロジェクトの主旨に応えるだけでなく、都市ソウルの新たな環境創生の原動力として、島全体を自然と環境に貢献する文化施設として計画した。
ソウル・パフォーミング・アーツ・セン ターは、長い間娯楽と憩いの場所として愛されてきたこの島に、再び人々を呼び戻すきっかけをつくるだろう。オペラ劇場、コンサートホール、野外劇場でのパ フォーマンスなどを通じて、市民はここでの活動に参加し、空間を体験する。そしてこの島に眠っていた新しい可能性を体験する。夏の洪水から 島を守るために、ノドゥル島の周縁部はコンクリートで固められている。島を自然の猛威から守るために、人工的な構築物を頼らざるをえな いということは皮肉な状況である。私たちは人工化されたこの島に、自然のレイヤーを与える。再生された水と緑により、島は本来の豊かな姿を取り戻す。島は 漢江の豊かな流れと一体になり、ソウルの街、そして市民とつながりと新たな形成し、都市の一部となる。ひとつのレイヤーは半透明のパレットで構成される。
パレットには2種類あり、ひとつは水を運び、もうひとつには樹木が植えられている。それぞれのパレットは視覚的に自然を現しており、機能的にはオペラ劇場を外部騒音から守る役割をする。また、水を運ぶパレットは河川の水の浄水施設としての機能を備える。各パレットではポンプで汲み上げられた河川の水を浄化し、浄化水は施設および外構において使用され、使われなかった水は川に還される。建築物は自然と一体となり、その力を借りて外部環境から身を守ることができる。半透明なパレットを通して降 り注ぐ光は、内部空間、そしてそこで展開されるパフォーマンスを豊かに彩るだろう。
構造的には、パレットは樹木のような根系ネットワークシステムで支 え られており、ランダムに配置されて全体のランドスケープを形成する。この構造体により、各パレットはお互い結びつき、全体のネットワークが構成される。こ れらは空間ネットワークであると同時に設備機能ネットワークである。人々はこの空間ネットワークにより、島全体を自由に体験できる。設備ネットワークは浄水機能の各段階をつなぐ。この構造体の考え方は、有機的ネットワークという概念に基づいている。
建築素材としては、トラスには炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用する。鉄の比重の1/5という軽量、かつ異形鉄筋の8倍という高強度である。パレットおよび表面には、半透明の素材であるガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を使用する。
竣工 | 2005 |
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所在地 | 韓国ソウル市 |
建築用途 | パフォーミングアーツ・センター |
敷地面積 | 119500㎡ |
意匠設計 | 山下保博/アトリエ・天工人 |
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構造設計 | 佐藤淳/佐藤淳構造設計事務所 |
設備設計 | 遠藤和広/EOS Plus |