背景
エチオピアは、東アフリカに位置する連邦共和国で、アフリカ最古の独立国です。2007年に、エチオピア暦での2000年に合わせて、在エチオピア日本大使館より、日本とエチオピアの架け橋となる「日本文化会館」を寄贈したい、その建築設計の依頼をいただきました。
場所は、エチオピア第二の都市、ゴンダール市。17-18世紀にゴンダール朝の都として栄え、町の中心部にある宮殿ファジル・ゲビが、世界遺産に登録されている古都です。
日本とエチオピアの架け橋
私たちは両国の伝統的な住居に着目しました。
エチオピアの伝統的な円形住居はシンプルな石積みの壁と、梁は木を渡しただけの木造の屋根組みで構成されます。
島根県の古民家
一方で、私たちは島根県の古民家の再利用について調査を進めていました。集落の過疎化が進み、住まい手、使い手を失って、朽ち果てつつある民家が、たくさんありました。
日本で空き家として放置されている古民家と、エチオピアの現地で捨てられていた石積みの円形の住居を移築して、それぞれ日本館、エチオピア館として建て直したら、新たな価値を見出せるのではないか?と考えました。一言でいうならば、「価値の再編成」です。
日本の古民家について
日本では、木材同士を直接組み合わせ、接合する工法が、1000年以上にわたり、受け継がれてきました。
その結果、金物を使わないため、長い年月建物を維持することが可能となり、また建物を移築する技術も発達しました。
百年近く建っている古民家からとれる古材は、自然乾燥がよく進んでおり、新材よりも強度が増すといわれています。また、現在ではなかなか手に入らない無垢の巨大な木材などが使われていて、建材としても充分に価値があります。
古民家のもつ美しい加工やそこに使われている伝統的技術は、ただ廃棄するには惜しいものです。