高密度でカオスな東京の住宅地の中にあっても、住宅の大小にかかわらず求められるのは光と風と伸びやかな空間である。
赤坂通りから行止まりの私道を200メートル以上奥に入った、都心部とは思ないほど静かな佇まいの整形な土地が敷地である。
良好なオープンスペースとお互いの視線が気になる大きめの集合住宅が周囲を囲む。
隣地の集合住宅の庭や樹木(大きな桜、紅葉、メタセコイヤ)は長期間にわたり心地よい借景となると感じ、それらを活かした計画を目指した。
敷地面積は180㎡以上あり、比較的余裕のある敷地と考えていたが、クライアントは出来るだけ大きな住宅を望み、400㎡に迫る地下1階、地上3階という大きなヴォリュームとなった。
結果、前面道路からある程度後退した正面以外は敷地境界に近接した配置となり、隣地建物との距離は近いところでは1mしかなく、4m前面道路の向かいには近隣の住宅が建ち、周囲との関係は密集地の狭小住宅のそれとあまり変わらない。
しかし、内部には70㎡弱の吹抜など、ダイナミックな空間を内包しており、その空間スケールに見合った「抜け」のある開口部を設けつつ、ネガティブな視線を避け、敷地と周辺の全体を活かすための試行錯誤により、生活体験を豊かにする住宅を目指して計画した。
名称は、禅を連想させ、英語で頂点を意味する「ZENITH」(ゼニス)と名付けた。
計画における思考の整理
1. マッシブな建物のファサードを、柔らかさを感じさせる杉板のパターンで分節化し、ピロティとセットバックとで出来るだけ大きさを感じさせないように意識した。
2. 開口部を最適化する
① 住居の規模に見合う壮大なスケールの眺望が得られるようにする。
② プライバシーを確保しつつ、内部からは高い開放性を感じさせる開口部を意識する。
③ 「抜け」を意識した開口部の位置・大きさの調整。
3.シンプルで味わい深い=日本的なデザインとする。
4.質感を重視した素材選び
5.構造について
① 直接基礎
② 壁式ラーメン構造(壁厚180~250/吹抜が大きいためルート3+適合性判定)
③ R階スラブはヴォイドスラブ(t=300)
竣工 | 2020年 2月 |
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所在地 | 東京都港区 |
建築用途 | 専用住宅 |
敷地面積 | 180.53㎡(54.61坪) |
建築面積 | 108.22㎡(32.74坪) |
延床面積 | 386.10㎡(116.80坪) |
構造 | RC造(耐震壁付ラーメン構造) |
階数 | 地下1階+地上3階 |
意匠設計 | 水上健二、堀次宏暢/アトリエ・天工人 |
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構造設計 | 羽田野祐二/羽田野構造設計室 |
設備設計 | 水上健二/アトリエ・天工人 |
協力企業 | 鈴木朝子/リブコンテンツ(キッチン設計) |
施工管理 | 山本洋、杉山凌平/礎コラム |
写真撮影 | アルフィー・グッドリッジ/一部 水上健二 |