この度、国連世界観光機関(UN Tourism)による「ベスト・ツーリズム・ビレッジ2024」において、山下保博 / 建築家(伝泊 代表)が総合プロデュースした「鹿児島県 天城町」の持続可能な観光地域づくりの取り組みが認定されました。
山下は、日常に埋もれていた天城町の魅力や特徴を発掘・再編集し、集落文化 × 地域住民と共に創る「日常の観光化」をテーマに掲げ、伝統文化や自然環境を次の時代に伝える持続可能なまちづくりを実践するための提言や支援を行ってきました。
天城町は鹿児島県の徳之島北西部に位置し、徳之島空港と平土野港を有する交通の要所で、さとうきびや畜産、ジャガイモをはじめとし、果樹や花卉といった農業が盛んな地域です。町の理念「ユイの心で命つむぐまち あまぎ」は、共同作業などを通じて喜びや困難を分かち合い支え合う「ユイ」の精神を表し、今も地域に深く根付いています。
ユイの心や天城町の文化を継承していくため、行政・地域住民・民間企業が連携し、様々な取り組みを行ってきました。このような持続可能な地域づくりが、今回のベスト・ツーリズム・ビレッジの認定に繋がりました。下記では、天城町が推進する「日常の観光化」した取り組みをご紹介いたします。
《循環型の取り組みを行う「農業」》
天城町は、鹿児島県内でも特に大規模な収穫面積を誇る「サトウキビ(黒糖の原料)」の主要生産地域です。
サトウキビの葉を牛に与え牛の糞を肥料にするなど、農業と畜産業の間で資源を循環させる循環型農業を推進し、継続のための就農支援活動も行われており、持続可能な生産体制の確立に寄与しています。
《人と「牛」との共生文化》
徳之島における闘牛文化は400年以上続いており、島のアイデンティティの一部として伝統行事や日常に根付いています。
島内では年間約20回ほど闘牛大会が盛大に開催され、天城町にある「松原闘牛場」では、稽古の観戦やブラッシングや餌やりなどのふれあい体験も可能です。子ども達と牛が砂浜やまちなかを散歩する姿は天城町の日常風景の一部です。
闘牛以外には畜産業も盛んであり、特産品に指定されています。
《生物多様性に富んだサンゴ礁の「海」》
奄美群島の海域に発達する多様性に富んだサンゴ礁は、天城町の海中でも観測することができます。また景勝地「犬の門蓋」は、隆起サンゴが長年浸食されたことで創られた奇岩の一つです。
その他7000年以上前の土器が発掘された水中鍾乳洞「ウンブキ」をはじめ、琉球列島の先史時代に関する重要な遺跡が複数あります。冬期はホエールウォッチングも可能で、1年を通して海の観光楽しむことができます。
《特別天然記念物の生きた化石「アマミノクロウサギ」》
世界自然遺産に登録された山々には、徳之島と奄美大島のみに生息する、天然記念物であり絶滅危惧種での「アマミノクロウサギ」をはじめとする多くの希少な動植物たちが生息しています。
人々の暮らしの中にクロウサギが現れる稀有な集落もあります。「アマミノクロウサギ観察小屋」やナイトツアーの参加で、希少野生動物を気軽に観察できます。