色々な機会に震災後の東北を訪れますが、文化財指定されない一般の古民家や蔵が地震や津波の被害を受けながらも残っている姿を目にします。震災前から高齢化・人口減少の影響で、解体・焼却が進んでいたかもしれませんが、震災をきっかけにそれが加速する可能性が高まっていると考えられます。
アトリエ・天工人では島根県を中心に古民家プロジェクトを進めてきましたが、震災後の東北地方についても、現状では手付かずと考えられる基礎調査から始めました。文化財指定されている様な伝統的建造物だけではなく、その地域では一般的な古民家群も、文化・風景を形成する重要な要素です。地域特有の材料や技術を基に作られている古民家群を将来に残していく事が、これからの街づくりや地域の人にとって意味のある事であると考えています。
東北には、気仙大工と呼ばれる独特の木造建築文化があります。神社仏閣や建具、装飾まで作る大工集団が民家まで作ります。約30年前に行った実測調査に参加されていた芝浦工業大学の伊東教授と共に、当時の調査地である陸前高田市気仙町今泉、矢作町的場へ行きました。
今泉は雁行する東浜街道沿いに気仙大工による建物が並ぶ地区だったのですが、今回の津波被害によりほとんどの建物が被害を受けました。
ある名家の立派な住宅があった場所付近では、テントの中に古材が保管され、基礎石も集められています。気仙大工研究所の平山氏によると、価値のある気仙大工の仕事であるが、そのまま組み直すのは難しいのではないかとの事です。
今泉の高台に建つ神社に気仙大工の技術の高さが見て取れました。
矢作町的場は津波の被害が無く、30年以上前の調査から大きな変化も無く、豊かな山村風景が広がっていました。当時調査をした何軒かのお宅では、代替わりをしており、今後の維持が大変だというお話を伺いました。
大工とは関係無いかもしれませんが、屋根の瓦が表札の代わりになっていたり、棟が瓦の透かし積みとなっているという特徴のある住宅が多くありました。
次回は気仙大工による木造技術の紹介をしていきます。